先日、二人の若手営業担当の方から、たまたま同じ「失注」のご報告を、続けて聞く機会がありました。
一人は「もう、自分には向いていないのかもしれません」と肩を落とし、もう一人は「次の提案のヒントをもらえました」と、なぜか少し前を向いている。起きた出来事は、同じ「失注」です。それなのに、受け取り方がまるで違う。この差は、いったいどこから来るのだろう——そんなことを、考えさせられました。
「事実」は一つ、「解釈」は無数
起きた出来事そのもの——「失注した」という事実は、あとから変えることはできません。けれど、その出来事に“どんな意味を与えるか”は、実は一つではないのです。
「自分はダメだ」と意味づけることもできれば、「改善のヒントだ」と意味づけることもできる。心理学ではこれを「リフレーミング(捉え直し)」と呼びますが、難しい理屈ではありません。要は、同じ景色を、別の窓から眺めてみる、ということです。
組織の“空気”は、解釈の連鎖でできている
面白いのは、この「解釈」が、一人の心の中だけで完結しないことです。
リーダーが部下の失敗を「誰の責任だ」と解釈する組織では、人は失敗を隠すようになります。逆に「よく挑戦した。ここから何を学べるだろう」と解釈する組織では、人は安心して、挑み続けることができる。——組織の空気とは、日々交わされる出来事への“解釈”が、少しずつ積み重なってできているのだと思います。
無理なポジティブは、かえって白ける
とはいえ、「いつも前向きに解釈しよう」というのは、少し無理があります。しんどい時に「これはチャンスだ」と言い聞かせても、心はついてきません。無理なポジティブは、かえって現場を白けさせてしまいます。
私がおすすめしたいのは、良し悪しを判定する前に、まず「そう来たか」と、一度そのまま受け止めてみること。判断を急がず、「他に、どんな見方ができるだろう」と、ほんの少しだけ立ち止まる。その“間(ま)”が、解釈の選択肢を、そっと増やしてくれます。
リーダーの問い一つで、空気は変わる
現場で使えるのは、たった一つの問いです。
「この出来事から、何を受け取れるだろう?」
部下が落ち込んでいるとき、チームが停滞しているとき、この問いをそっと差し出せるリーダーがいると、組織の空気は少しずつ、しなやかになっていきます。出来事そのものは変えられなくても、意味は選び直せる。その自由を、一人ひとりが取り戻していく——それが、「喜びの中で生産性が上がる組織」への、静かな第一歩だと感じています。
結びに
私たちは、出来事に振り回されているようでいて、本当は「自分の解釈」に振り回されているのかもしれません。
さて——あなたは今日起きた出来事に、どんな意味を与えたでしょうか。そして、それは“選び直せる”ものだったでしょうか。
—— コンサルタントエージェント 代表 廣川智彦
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