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「測れないから、無い」——その線引きを、組織の中で問い直す

「測れないから、無い」——その線引きを、組織の中で問い直す

先日、私がかねてより敬愛している田坂広志先生の講演を、聴かせていただく機会がありました。想像をはるかに超える熱量で、思わず涙しながら聴き入ってしまったのですが、その中で、深く心に刺さった問いがありました。

「証明できないから、錯覚だ」——本当に、そうでしょうか

田坂先生は、こう語られました。「大いなる何かに導かれる感覚や、シンクロニシティ——誰もが一度は感じたことがあるはずだ。なのに現代では、『科学的に証明されないから、あれは錯覚だった』とされてしまう」。

これは、よく考えるとダブルスタンダードではないか、と。心の奥では確かに感じているのに、「測れないものは、無いことにする」。この指摘に、私は深く頷いてしまいました。

組織の中にも、同じ“線引き”がある

このお話を、私はそのまま「組織」のことだと感じました。

職場にも、数字にはならない大切なものが、たくさんあります。チームの「空気」。人の「やる気」。言葉にならない、小さな「引っかかり」。——けれど私たちは、つい測れないものを脇に置き、売上や工数といった「測れるもの」だけで判断してしまいがちです。

本当は、現場の誰もが感じているのに。「なんとなく、この職場は息苦しい」「なんとなく、あの人は無理をしている」——その“なんとなく”を、証明できないからと切り捨ててはいないでしょうか。

「なんとなく」は、たいてい当たっている

私は研修の現場で、この“なんとなく”ほど、実は正確なセンサーはないと感じています。

数字に表れるより先に、人は空気で異変を察知します。エンゲージメントの数値が下がる前に、現場は「なんだか元気がないな」と気づいている。その小さな違和感を、リーダーが「気のせいだ」と流すのか、「何かあるのかな」と拾うのか。組織の分かれ道は、案外そんなところにあるのだと思います。

いつか、科学が追いつく——量子力学が開く扉

田坂先生のお話は、そこからさらに大きな地平へと広がっていきました。最新の量子力学の話です。

たとえば「量子のもつれ」。二つの粒子は、何万光年と離れていても、一方の状態が決まれば、もう一方が瞬時に呼応するといいます。距離を超えて、つながっている——。あるいは、この世界のすべては「波動」として捉えられる、という見方。かつては神秘とされたこれらが、いま科学の言葉で語られ始めています。

田坂先生は、こうした“目に見えないつながり”について、「今はまだ完全には証明されていなくても、いずれ科学が追いつくと信じている」と、熱を込めて語られました。唯物論と唯心論の対立が終わり、新しい時代の扉が開く。その“前史”を、信念を持って生きたい、と。

私は、これを組織の話としても受け取りました。職場もまた、目には見えない「つながり」や「場」で動いています。一人の機嫌が、なぜかチーム全体に伝わっていく。離れた部署の熱意が、巡り巡って別の現場を動かす。——組織の「空気」とは、案外、そうした“見えないつながり”の現れなのかもしれません。だとすれば、それを軽んじる手はないのだと思います。

測れないものにも、まなざしを向ける

もちろん、数字は大切です。測れるものをきちんと測る努力は、経営の基本です。

けれど、それと同じ真剣さで、「測れないもの」にもまなざしを向ける。人の心、場の空気、まだ言葉にならない想い——。その両方を大切にできたとき、組織は「喜びの中で生産性が上がる」方向へ、静かに動き出すのだと思います。田坂先生の“熱”は、私にそのことを、改めて教えてくれました。

結びに

「測れないから、無い」ではなく、「測れないけれど、確かにある」。

その一歩の、捉え方の違いが、組織の空気を、そして人の生き方を、少しずつ変えていくのかもしれません。

さて——あなたの組織で今、数字にはならないけれど大切な“何か”は、ちゃんと拾われているでしょうか。

—— コンサルタントエージェント 代表 廣川智彦

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