独立して事業を営んでいると、つい何でも「自分でやらなければ」と抱え込んでしまう瞬間があります。先日読んだ一本の記事に出てくる、スティーブ・ジョブズのある逸話に、私はハッとさせられました。
12歳のジョブズがかけた、一本の電話
ジョブズは12歳のとき、ヒューレット・パッカードの共同創業者ビル・ヒューレットに、いきなり電話をかけたそうです。「周波数カウンターを作りたいので、余っている部品をいただけませんか」と。
すると、ヒューレットは笑って部品を譲り、おまけにその夏の仕事まで与えた。ジョブズは後に、こう語っています。「私が助けを求めて、助けてくれなかった人に出会ったことは一度もない。多くの人は、受話器を持ち上げて電話をかけようとしないだけだ」と。
「助けを求める力」が、成し遂げる人と夢見る人を分ける
あの初代iPhoneの傷つきにくいガラスも、ジョブズが自前で解決しようとせず、コーニング社のCEOに電話をかけ、「あなたの力が必要だ」と頭を下げたことで生まれたといいます。
後年、そのCEOのオフィスには、ジョブズからの一通の手紙が飾られていたそうです。そこには「あなたなしでは成し遂げられなかった」と書かれていた——。
助けを求めることは、決して弱さではありません。むしろ、相手の経験や才能への“信頼と敬意”の表明なのだと、この逸話は教えてくれます。
「助けて」と言える空気が、組織を強くする
これは、個人の話にとどまりません。
「困っています」「教えてください」——その一言が自然に出てくる職場と、なかなか出てこない職場。組織の強さの差は、案外このあたりに表れるのではないでしょうか。
助けを求められた人は、「頼られた」「信頼された」と感じ、力を発揮したくなる。助けた人と助けられた人のあいだに、温かい循環が生まれていきます。私がいつも申し上げている「組織の空気」とは、まさにこうした循環のことだと感じています。
「お互い様」という、いちばん強い土台
私は、組織づくりの根っこに「お互い様」という感覚があると考えています。
一人で抱え込まず、頼り、頼られる。その関係性のなかでこそ、人は安心して力を出し合えます。そしてそれは、「喜びの中で生産性が上がる組織」の、いちばん深い土台になるものだと思います。
ジョブズほどの天才でさえ、「あなたなしでは成し遂げられなかった」と書き残しました。ならば私たちも、もう少し軽やかに「助けて」と言っていいのかもしれません。
結びに
強い人とは、何でも一人でできる人のことではないのでしょう。
本当に強い人とは、上手に人を頼り、頼られたときには惜しみなく力を貸せる人。そういう人が増えていくほど、組織の空気はやわらかく、そして強くなっていきます。
さて——あなたは今日、誰かに「助けて」と言えているでしょうか。そして、まわりの誰かの「助けて」に、気づいてあげられているでしょうか。
—— コンサルタントエージェント 代表 廣川智彦
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