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「感動」という一語が、11万人の心をひとつにした ——パーパス経営に学ぶ、組織の空気のつくり方

「感動」という一語が、11万人の心をひとつにした ——パーパス経営に学ぶ、組織の空気のつくり方

先日、オンラインで開かれた「パーパス経営」をテーマにしたイベントに、参加させていただきました。

登壇されていたのは、低迷期のソニーを再生へと導いたことで知られる、平井一夫元社長です。世界に11万人。ゲーム、金融、エレクトロニクス——業態も、国籍も、価値観もバラバラな社員を、いかにして一つの方向へまとめていったのか。その実践のお話に、私はすっかり引き込まれてしまいました。

復活の核にあった「KANDO(感動)」

平井さんが掲げたのは、「感動(KANDO)」という、たった一語のパーパス(存在意義)でした。

ミッション・ビジョン・バリュー——その核となる目的を「感動」と定める。言葉にすればシンプルですが、これを11万人に“本気で”浸透させるとなると、並大抵のことではありません。

パーパスは「掛け声」では力を生まない

特に心に残ったのは、平井さんのこの一言でした。「掛け声だけのパーパスは、実際には力を生まない」。

東京の本社で「感動だ」と叫んでも、マレーシアの工場で働く方の心に、そのまま届くわけではない。だからこそ各リーダーが、自分の部署の言葉に翻訳し、「この商品のどこが感動なのか」を、1年経っても3年経っても問い続けた。感動、感動、感動——嫌になるほど言い続けて、ようやく浸透した、とおっしゃっていました。

理念とは、額に飾って終わりではなく、毎日の現場で交わし直し続けるもの。そのことを、改めて教えられた気がしました。

その根っこにあったのは「EQ」

そしてもう一つ。平井さんは、リーダーに最も必要なものとして「正しい人間になる(EQ)」を挙げておられました。

知識やスキル(IQ)が大事なのは言うまでもありません。けれど、ある調査では、部下が上司に期待しているのは、能力の高さよりも“人としてのあり方”——つまりEQの高さだといいます。

パーパスを浸透させる力の源は、結局のところ、それを語る人の人間性にある。私が研修で「マインドとスキルは両輪です」とお伝えし続けているのも、まさにここに通じる話だと感じました。

「自分ごと」になったとき、組織の空気は変わる

平井さんは、浸透の過程を「巨大で重い岩を、坂の上へ押し上げるようなもの」と表現されました。

けれど、ひとたび峠を越えれば——あとは慣性で、皆が自然と動き出す。理念が「文化」になり、やがて組織の空気そのものになっていく。その風景は壮観だった、と。

一人ひとりが「やらされる」のではなく、「自分ごと」として目的を引き受けたとき、組織の空気は静かに、しかし確かに変わっていきます。これはまさに、私がいつも申し上げている「喜びの中で生産性が上がる組織」の姿そのものだと感じました。

結びに

立派な理念を掲げる会社は、たくさんあります。

けれど、それが本当に力を持つのは、トップの信念と、現場一人ひとりの「自分ごと」が出会えたときだけなのかもしれません。そしてその出会いは、特別な仕組み以上に、日々交わされる言葉と、それを語る人の“あり方”から生まれていくのだと思います。

さて——あなたの会社の理念は今日、額の中で静かに眠っているでしょうか。それとも、現場の言葉として、いきいきと生きているでしょうか。

—— コンサルタントエージェント 代表 廣川智彦

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